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龍馬がゆく

人間の歴史を見てみると、歴史の大いなる転換は、小さな出来事から起こされていることが分かる。例えば、日本の歴史の中での最大の転換事と言うのは、徳川幕府の政権が倒されて、明治維新に変わっていったその時であろう。この時に日本の近代化というものが幕開けしていったのである。

ところが、この日本の歴史の中でのこの大きな出来事というのは、実は一人の人物の、たった一言によって切り開かれていったのであった。その人物というのは、坂本龍馬その人である。彼が言った、たった一言。誰に向かって言ったのか。それは西郷隆盛に向かってであった。どういう言葉なのか。「それでは長州がかわいそうではないか」。このただ一言が歴史を大きく転換していったのである。

当時、討幕の運動が起こりつつあった。その中で特に長州藩はこのことの為に立ち上がり、ただ一国、幕府に立ち向かってゆく。ところで時代は大きく変わろうとする時であり、それに志を同じくする多くの諸藩が生まれつつあった。薩摩藩もその一つであった。この薩摩藩と長州藩が連合して立ち上がるならば、討幕の運動は大きく展開していくことは目に見えていたのである。ところが仲が悪かった。同じ志を持っていても、相手に対してなかなか歩み寄ろうとしないのである。自分の藩の体面と威厳というものを保とうとし、自分の方から譲って握手を求めて行こうとはしない。

この中を取り持ったのが龍馬である。司馬遼太郎氏は「龍馬がゆく」の中でこのあたりのことをくわしく描く。

薩長連合の成立のために、先述の龍馬の一言が用いられる。この人物は、日本の歴史を動かす為に天が送った人物である、と司馬氏は言う。

「起きよ。光を放て」(イザヤ六十の一)。我らが、福音の一言を語るとき、確実に「光はやみに勝つ」。そして新しい歴史が生まれるのである。

一九九三年一月十日

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